【日替りフードブログ】生しらす丼の思い出

今日のイチオシ海の幸は【静岡産　生しらす】です。

小魚の集合体という特性上、かき揚げにすればまだしも生の状態ではいまいち主役を張れない生しらす。
なにかちょっとつまみたい時には適役ですが、そもそもどんな状況テンションの時に食べればいいのかわからない、そんなお客様に『生しらす丼』はいかがでしょうか。


……あれはわたしがまだ大学生だったころ。
友人の原付を借りてはまた別な友人とほうぼうへ出かけていた時期、ある平日に「今日は海へ行こう」と大学のあった府中から手近な海だった平塚に向かいました。

正午すぎくらいに出て、平塚に付いたのがたしか15時前。
春終わりかけのじぶんに男子大学生ふたりが海に行ったところで、「海だー」「うみだねー」とどうしようもないことを言い合ってそれでもう何もすることがない。

しばらく海を眺めたのち、じゃあ今日はこのまま横浜あたりまで行ってみよう、という話になり、とはいえその前に「俺今日何も食ってねーや。なんかメシ食ってこうよこのへんで。」となりました。

平塚あたりの海沿いなので、ふと見渡せば方々に「生しらす」というのぼりが立っています。
「いいねー、生しらす。」「やっぱそこの名物食べないとね」とか生しらすがどんなものなのかも分からないながらに言ってたかんじがとても男子大学生っぽくていいと思いますが、さておきどこかで生しらすを食べよう、ということに。

そんなときはスマホでさくっと検索、という時代の5,6年前の話なので、とくにあてもなくそのあたりをウロウロして目についたところに入るしかない、けれども時間が時間なのでランチは終わってるし夜の営業はまだ始まっていない、というところでようやく一軒の居酒屋を見つけました。

そこで食べた生しらす丼の異様なおいしさ。
ライスの上に大葉が刻んでしいてあり、その上に生しらす、納豆、アジ、スルメイカががっつり盛られたところへさっと醤油をかけていただく。


「やべーないのちゃん、これ超うまい！！」
「やー髙井さんこれはうまいねー。」
「おにーさんたち学生？どっから来たの？」
「あ、自分たち府中から来ました。」
「府中から、へー。何しに？」
「いやーなんとなく海に来たくて。」
「ふーん。学生なら勉強しなくちゃダメでしょー」
「今日は講義ないんですよ。」
「おれはサボって来ました。」
「へー。いまの学生さんはいいねー、気軽にこういうとこまで来れて。」
「いやいやいまの学生も大変ですよ、たまには気晴らししないと」
………
……
…



途中でカットインしてきたサラリーマンのおじさんは平日のあの時間にあそこで何をやっていたのか。

なんだかがっつり盛り上がったすえに会計も払ってもらうというよき出会いだったものの、カットインしてきたその瞬間から10年ちょっとたった今に至るまで、そのときを思い出すたびに「あのおじさんはどういう流れで昼間っからスーツ着てボトル空けてたのかなー」と思います。


そういう丼です。生しらす丼。

・メニューには乗ってない
・その生しらす丼を食べた私は昨日店長に「ナオさんなんかおじさんみたいなにおいしますよ」と言われたショックが抜けていないので営業には出ない
・このブログは従業員が読んでいないのでどんなものなのかを従業員に事細かに説明する必要がある
・時価

という4点を乗り越えてもなお食べる価値のあるものかと思いますので、ご来店の際にはぜひ！！
あとそのとき行ったお店はいまも営業中らしいので、平塚に行った際にはぜひ！！